CsmAはキチン合成酵素のN末端側にミオシンと相同性のあるドメインを持つ特異な構造をしたタンパク質で1852アミノ酸よりなり、我々のグループが糸状菌Aspergillus nidulansより初めてその遺伝子を単離した。その後、稲のいもち病菌であるPyricularia oryzae、大麦のうどん粉病菌であるBlumeria graminisからもそのホモログの単離が報告された。またごく最近公表された糸状菌Neurospora crassaの全ゲノム配列内にもCsmAのホモログをコードすると考えられる遺伝子が存在したが、酵母Saccharomyce cerevisiaeの染色体上にはこの遺伝子のホモログは存在しない。これらのことからCsmAは糸状菌において普遍的に存在するが、酵母型の生育をする生物には必要のないタンパク質である可能性がありその機能は非常に興味深い。 本研究においてはまず、CsmAが実際にその全長を有するタンパク質としてA.nidulans内に存在することを確認するため、染色体上のCsmAをコードする領域のC末端に9XのHAのタグを挿入した株を作製した。この株と野生株について膜画分を調製しHAに対する抗体を用いてwestern解析を行ったところ、HAのタグを繋いだCsmAを発現させた株についてのみ約220kdのサイズにバンドが検出された。よって、CsmAが実際に菌糸内でぞの全長を持つタンパク質として存在していることが証明された。さらにCsmAのミオシン様ドメイン内のミオシンタンパク質によく保存された領域であるP-loop、Switch I内の保存されたアミノ酸それぞれ1つを置換したものを高発現する2種の株を作製した。これらの株において野生型のCsmAの代わりに1アミノ酸置換した変異型ミオシンを高発現させた場合どちらも野生株と同様の表現型を示した。このことからCsmAの活性にミオシンのモーター活性は必須ではないことが示唆された。一方、CsmAのミオシン様ドメインの機能についてin vitroで解析するため、この部分をGFPと連結したタンパクをS.cerevisiaeで大量発現させることを検討したが、目的の融合タンパクを大量に得ることができなかった。現在、in vitro transcription/translationの系で生産したCsmAのモータードメインとGFPとの融合タンパク質の精製を試みている。
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