(1)ガラス上を滑走しているマイコプラズマを瞬間凍結し、フリーズフラクチャー法を用いた電子顕微鏡観察を行った。駆動力が発生しているように見られる首の部分に、長さ30-50nm、直径5nmのスパイクが膜内部の球状の構造から外部へ突き出し、他の端がガラスに張り付いていることが明らかになった。(2)変異株m13で欠失しているタンパク質を同定し、その遺伝子の構造を決定した。このタンパク質は2ヶ所の膜貫通領域を持つ約350kDaの巨大タンパク質で、変異株ではN末端から3分の1の位置にナンセンス変異が入っていた。このタンパク質を認識するモノクローナル抗体は滑走時のガラスへの結合を阻害した。またこの抗体を用いた蛍光抗体染色では、首の部分が認識された。(3)マイコプラズマの尾部にビーズをつけ、培地のフローとレーザートラップを用いて力-速度関係を測定した。速度は力が増大するに従って直線状に減少した。ストール時の力は26-28ピコニュートンで、ミオシンやキネシンの5-7倍であった。(4)細胞がATPが枯渇して滑走ができなくなった状態で、人為的に膜電位を形成させると滑走が回復することを明らかにした。このことは滑走がATPよりも膜電位に依存することを示している。
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