研究概要 |
多価不飽和脂肪酸は、生体内で合成されず必須脂肪酸として食品から摂取する必要がある。この多価不飽和脂肪酸には、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)に代表されるn3系、アラキドン酸などに代表されるn6系が存在し、お互い生体内では相互変換されず、代謝において酵素を共有するため代謝を調節し合うことが知られていた。ごく最近、n3系多価不飽和脂肪酸の1つであるEPAをアルツハイマー病及び脳血管性痴呆患者に投与したところ、認知機能の改善がみられたとの報告がなされ、EPAの有する機能が注目されている。しかしながら、神経細胞に対する効果及びその作用機序は明らかとなっていない。そこで我々は、神経細胞に対するEPAの効果を明らかにする目的から、培養神経細胞を用いた検討を行った。 ヒト神経芽腫細胞株(NB1)にEPAエチルエスル(最終濃度を1ug/ml、10ug/ml、100ug/mlの3段階)を培地に添加して、薬剤添加後24,48,72時間に、MTT法により、細胞増殖の程度を判定した。 不飽和脂肪酸であるEPAの過剰投与によって、培養神経細胞の増殖抑制が濃度依存的に生じた。今後、EPA濃度をより詳細に変化させ、培養神経細胞ならびに初代培養神経細胞に対する効果の検討が必要と思われる。
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