研究概要 |
【目的】CARPは、アドリアマイシン反応蛋白として心筋細胞より単離されたアンキリン反復配列をもつ因子である。われわれはこれまでに、CARPが血管平滑筋細胞にも存在すること、およびそのアミノ酸配列は、細胞周期関連因子の中で、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)インヒビター(CDKI)であるp15,p16,p19と相同性をもつことを明らかにした。一方、動脈硬化病変の形成には、TGFbが重要である。本研究においては、心血管系細胞特異的な核内因子であるCARPの発現がTGFbシグナルによって直接に調節を受けるか、またその機序について解析した。また、CARPを発現するアデノウイルスを作成することによりCARPの機能を解析した。 【結果】血管平滑筋細胞および血管内皮細胞において、TGFb刺激によってCARPの発現が経時的に誘導された。Smadの発現ベクターあるいは1型受容体の構成的活性化型変異体の共発現は、CARPプロモーターの活性を増加させた。SmadはCARPプロモーター中のCAGAボックスに直接結合した。 【結果、考察】以上より、CARPはTGFbシグナリングによって直接的に調節されることが明らかになった。さらに、CARPを発現するアデノウイルスを平滑筋細胞に感染させることによって、p53,p21の発現が蛋白レベルで増加すること、及びpRBのリン酸化が抑制されることを認めた。心血管系に限らずこれまでに、TGFbの調節を受ける、細胞型特異的な細胞周期調節因子の報告はほとんどなく、CARPは血管細胞に特異的な分化機構や増殖機構の調節因子の解析に非常に有用であろう。
|