研究概要 |
最近L-fngがNotchの細胞外ドメインにあるO-結合型FucoseにGlcNAcを転移する糖転移活性を持つことが示されたが、糖転移酵素は主にゴルジ体や小胞体に局在するのに対し、R-fngは細胞膜表面に存在し、L-fngは大部分が細胞外に分泌されることが確認されている。そこで、これらFringeタンパクの糖転移活性について検討するため、O-結合型Fucoseで修飾されることが予想されるNotch1のAbruptex領域とO-結合型Fucose siteをもたないリガンド結合領域に相当する組換えタンパクを作製した。その結果、糖転移活性が報告されていなかったR-fngに関しては、O-結合型Fucoseの疑似単糖であるpNp-Fucoseに対しては活性を示さなかったが、Notch1 Abruptex領域に対しては弱い活性を示すことがわかった。一方で、BIACOREにより解析を行った結果、R-fng、L-fngともに、Notch1リガンド結合領域、Abruptex領域の両方に高い結合親和性を示すことがわかった。これらの結果から、R-fng、L-fngの糖転移活性は非常に弱く、むしろNotchの細胞外領域に特異的に結合して、Notch ligandとNotchとの相互作用をコントロールしている可能性が示唆された。さらに,R-fngが高発現している大脳皮質の初代培養系を用い、R-fng組換えタンパクを添加した。その結果、Notchシグナル系の下流の転写因子であるHES1の発現量が有意に減少することがわかった。大脳皮質ニューロンにおいてR-fngはNotchシグナル系に対して抑制的に作用していると考えられる。一方で、L-fngは歯芽で高発現しており、マウス歯芽の上皮組織にL-fngをしみ込ませたビーズを作用させるとHES1の発現が誘導されることがわかった。
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