研究概要 |
[目的]Notch受容体のシグナル発生機転と、Notchによる造血細胞の分化抑制およびその機序の解明を目的とした。 [方法](1)Notch2に対する特異抗体を用い、リガンド刺激によるNotch2の切断、Notch2分子の細胞内移行、リン酸化を調べた。(2)造血系細胞株を用いて分化に対する活性型Notch1(aN1)の影響を調べた。一方、血球分化や増殖に関与する転写因子(HTF)について分化刺激による発現の変化を調べた。さらに、aN1を導入した細胞株にdominant-negative型GATA(DN-GATA)およびPU.1を発現させ、分化刺激に対する反応を観察した。 [結果および考察](1-1)Delta1,Jagged1,Jagged2のいずれかのリガンドがNotch2に結合することにより、Notch2分子内に切断が生じ、細胞内部分が短時間で核内に移行した。(1-2)核内に移行するNotch2分子断片はリン酸化された。(1-3)リガンドはNotch2を介して細胞内の転写制御を行った。(2-1)aN1は、赤芽球系・顆粒系への血球分化を抑制した。(2-2)分化刺激により種々のHTFの発現が変化したが、GATA2以外のHTFの発現変化はaN1による修飾を受けなかった。GATA2については、野生型32DではG-CSF刺激によって発現量が著明に減少し、aN1導入32D(aN1/32D)では発現が維持されていた。aN1/32DにDN-GATAおよびPU.1を発現させたところ、aN1/32DはG-CSF刺激による分化能を再獲得した。従って、aN1はGATA2の発現・機能の維持を介して分化抑制を行うことが示唆された。 [結論]Notch受容体のシグナル発生機転の一部を解明した。Notch活性化により造血細胞の分化が抑制され、その機序の一端がGATA2の発現・機能維持にあることを示した。
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