屈地性や屈光性で見られるオーキシン依存性偏差成長反応欠損突然変異体nph4とmsg2の研究をおこなった。本年度は、前者の原因遺伝子がオーキシン応答性転写因子遺伝子ARF7であることを明らかにした。既に後者の原因遺伝子はオーキシン初期応答性遺伝子族遺伝子IAA19であることを明らかにしているので、両者がC末端側のタンパク質間相互作用ドメイン(CTD)を通して相互作用するかどうか、酵母のtwo-hybrid系を用いて調べた。その結果、(1)一般にARF-CTD間のホモダイマー形成相互作用は、IAAタンパク質間のホモダイマー形成相互作用よりも弱い、(2)ARF-CTDとIAAタンパク質間のヘテロダイマー形成相互作用はそれぞれのタンパク質のホモダイマー形成相互作用よりも強い、(3)IAA19の優性突然変異はタンパク質間相互作用に影響しない、(4)ARFのメンバーとIAAのメンバー間で特異的なヘテロダイマー形成相互作用は存在しないということが分かった。 細胞内IAAタンパク質レベルが生理的に重要である可能性があるので、抗体による測定を試みた。大腸菌で発現させたIAA19組換えタンパク質を抗原にしてウサギ抗体を調製した。この抗体は数ngの組換えタンパク質を検出する能力があるが、今のところ、野生型でもmsg2でもIAA19タンパク質を検出することに成功していない。IAA19プロモーターGUS融合遺伝子を野生型に導入して、偏差成長反応時のIAA19の遺伝子発現を調べたが、同反応に対応した発現の変化は観察されなかった。また、比較研究としてARF8遺伝子破壊株を単離してその表現型を調べたが、偏差成長反応は正常であった。
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