本研究は、消滅の危機に瀕している伝統的方言語彙を記録するために、全国的な分布調査を行なうことめざす。この目的に向けて、本年度は次の作業を行なった。 1.調査項目の選定:方言差が存在しながらも衰退が著しいと思われる語彙について検討した。その際、国立国語研究所「日本言語地図」が対象にした意味分野の範囲で、抜け落ちている主要な項目を網羅することに配慮した。今年度は、身体部位、疾病、感覚、行動、親族など、人間をめぐる意味分野を中心に、方言量の多い116項目を選定した。 2.調査票の作成:上記の調査項目を2つに分け、「第1調査票」「第2調査票」を作成した。質問は過去の通信調査の結果を踏まえ、もっとも回収率が高いと思われるなぞなそ式を原則とし、これに参考語形を添えるという形式をとった。参考語形は、予想される分布の広がりや、中央語史との関わりなどをもとに選定した。 3.調査の実施:郵送による通信調査法をとるため、各市町村の教育委員会および話者の方々の協力を得た。教育委員会に依頼し、教育委員会から適当な話者に調査票を渡してもらうという方式をとった。各市町村教育委員会のリストを作成し、全国2000地点に配布した。 4.調査票の回収:全国からの回答が戻りつつあり、回収された調査票から整理を開始している。回答のあった教育委員会と話者に対しては、折り返し、礼状などを送付している。
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