研究概要 |
1 代表者の上野善道は,特に青森市方言と香川県伊吹島方言を数次にわたって詳しく調査した。青森市では,複数のアクセント単位に分かれるという特異な現象が見られる複合語を調べ,その分かれる条件を解明した。伊吹島では,複合動詞の過去形と5拍の複合名詞のアクセント調査を行ない,それぞれの規則を明らかにした。今後,対象を他の活用形や6拍以上の複合名詞にも広げる予定である。その他,石川県金沢市方言,鹿児島県黒島大里方言の調査も行ない,その結果をともに論文にまとめた。青森・伊吹島・金沢の3方言については,日本と外国の地名のアクセントも調べた。 2 分担者の中井幸比古は,岡山県日生町寒河方言を調べ,4モーラ体言のアクセント体系は東京方言と同じで5つの型があり,所属語彙の面でも類似することを明らかにした。この方言は2拍名詞第2類が特異な現われ方をすることで知られるが,それに類する現象は4拍語では見られなかった。中井はまた,中央式諸アクセントめ整理も進めた。 3 協力者の新田哲夫は,石川県白峰村字白峰において動詞・形容詞の活用形のアクセント調査を行なった。従来の報告どおり「下降式」の存在を確認するとともに,近隣の方言には見られないパターンが存在することが明らかになった。 4 協力者の大和シゲミは,福井県上中方言アクセントの記述的研究を行ない,2〜6拍名詞を調査した。対立する2つの式音調の実相と頻度,下降式語の核の有無およびその位置による対立,併用される音調などについて,方言内部の個人差の存在が分かった。
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