研究課題/領域番号 |
12039211
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 徹 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20173015)
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研究分担者 |
生越 直樹 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (90152454)
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キーワード | 言語接触 / 移民 / 在日コリアン / トルコ系移民 / 海外調査 / ドイツ / 言語景観 |
研究概要 |
移民コミュニティで固有言語から多数派言語への移行が、どのような要因により促進されあるいは阻害されるかを、大阪とベルリンという2つの異なる移民コミュニティを比較することにより検討した。 林と生越は、2つのコミュニティでほぼ同じ内容のアンケート調査を中学・高校生に実施し、以下の結果を得た。 (1)在日コリアンの生徒たちの言語行動には出生地(祖国生まれか日本生まれか)が大きく影響する。一方ベルリンのトルコ系の生徒たちは大部分がドイツ生まれだが、むしろ祖国生まれの在日コリアンの生徒たちに似ている。 (2)祖国生まれの在日コリアンの生徒たちと、ドイツ生まれのトルコ系の生徒たちは、それぞれ、韓国語とトルコ語を生活のなかで用いている。一方、親も自分自身も日本生まれ(old comer)の在日コリアンの生徒たちは、日常生活のほとんどの場面で日本語を用い、韓国語は同胞であることを確認する場面で用いるのが主である。 (3)生活の中で韓国語を使う在日コリアンの生徒たちも両親とは韓国語で話すが、兄弟姉妹、とくに年下の弟妹と話すときには日本語を使う割合が高まる。ベルリンのトルコ系の生徒たちも両親とはトルコ語で話すが、兄弟姉妹と話すときはドイツ語の割合が高まる。ただし、女子は男子に較べ、家庭内でトルコ語を使う割合が高い。 研究協力者の金美善(国立民族学博物館・外来研究員)は、東京都新宿区と大阪市生野区のコリアンコミュニティにおいて言語景観の実態調査をし、新たなテーマの開拓を行った. また今年度は、研究会「移民コミュニティにおける言語の変化」を6月7日(第1回)7月6日(第2回)に開催し、本研究課題の成果を発表するとともに、本研究課題の外の研究者から意見を得る機会をもった。 なお、本研究課題の成果は、3点の報告書の他に、月刊誌『言語』2003年6月号(大修館書店)に特集として発表される予定である。
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