研究概要 |
1.ビルマ域内の小数民族言語・ビルマ語諸方言(危機言語endangered languageを含む)の分布域と言語名(自称・他称)の同定作業を,文献や現地調査を通じて,すすめた。 2.典型的な危機言語であるポン語Hpunについて,現在この言語を調査中のU Tun Aung Kyaw(ヤンゴン大学ビルマ文学科講師)の資料を検討し,本人の諒解を得て,本年度の研究成果報告書の一部として公刊した。 3.18-19世紀にインドのマニプールから移住してきたメイテイ族(ビルマではカテー族Katheと呼ばれる)の言語メイテイ語Meitei(カテー語)マンダレー方言をマンダレーとヤンゴンで調査した。マンダレー方言の音声・音韻面での特徴は,ビルマ語の干渉により,尾子音-P, t, k ;-m, n, oの区別をもはや完全には保持していないことである。 4.アラカン地方からバングラデシュのチッタゴン丘陵地区にかけて分布するムロ語Mroの語彙調査をした。いままで公刊されている資料つきあわせると,ムロ語(ムル語Mru)よりむしろカミ語Khamiに似通ったものが多い。言語名と言語の実体との関係が不分明である。この話し手の自称はMro-khami(ムロ人の意)で,Khumiとは別だという。 5.カチン州のマル語Maru,アツィ語Atsi,ラシ語Lashiをそれぞれ短時間調査した。 6.第34回国際シナ=チベット言語学会議(雲南・昆明,2001年10月)において,「ポン語のなかのビルマ語同源語」と題する研究発表を行ない,ポン語の現況を紹介する一方,ビルマ語との語彙比較の一斑をしめした。(本年度研究成果報告書に収録してある。)
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