研究概要 |
インド共和国タミルナドウ州で話されているトダ語(ドウヴィダ語族に属し、使用者は約800名)のインフォーマント(男性1名,女性2名)を面接調査し、約3,200語の基礎語彙を収集し、それらをDATで録音した。収録データを詳しく分析したところ、ドラヴィダ語研究の権威者エメノー教授が約50年前に調査記録した語彙の90パーセントが、発音も意味もわれわれの記述と一致することがわかった。たゞ残りの10パーセントについては、現在既に使われなくなっていたり、発音が少し違っていたり(特に20歳代の女性インフォーマントの発音とエメノー教授の記録した発音との差が大きかった)、意味が少しずれていた。なお、15年ほど前にタミル人言語学者シャクティヴェル博士の行ったトダ語の調査記述は、かなり不正確で、発音も意味もぼゞ半分がわれわれの記述と異なっていた。 マハラーシュトラ州北部で話されているナハリ語(所属語族は不明、使用者は約600名)については、一人の男性インフォーマンを面接調査し、約400語の基本語彙を収録したが、クィーパーの研究報告書に現われる語彙とはかなりのずれがあり、されに多くの語彙の調査と文法形式の分析が必要である。 トダ語もナハリ語も、語彙調査を続行するかたわら、それぞれの民話や歌謡を録音し、さらには儀礼・舞踊・生活用具・動物・植物などの映像を録画する必要がある。
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