大角翠(研究代表者)は昨年度に引き続き、2001年8月、9月にニューカレドニア本島でフィールドワークを行った。その前後にはシドニーでニューカレドニア関係文献資料の収集、また、太平洋言語関係の研究者と情報交換を行った。ヌメア、ラフォアでティンリン語の言語調査およびティンリン語の語彙、テキストの録音作業を行った。さらに、ブラーユ地域の消滅の危機に瀕していると思われるネク語の調査を始めた。ネク語やその周辺の言語に関する情報、資料はカナク文化センター図書館や、大学その他で収集、また、研究者との会合を持った。インフォーマントを探すことは難しかったが、最終的にネク語がまだ日常的に使用されているワウェ(原住民)部落に入り、基礎語彙や、テキストの予備的調査を行った。現地のメディア(ニューカレドニア・ラジオとカレドニア新聞-Les Nouvelles Caledo)向けにニューカレドニアの言語に関する短い講演を収録した。ティンリン語のテキストおよびネク語の基礎語彙(予備的)は『環南太平洋の言語 第2号』の中で発表する。 ヴァヌアツの社会言語調査は昨年同様、内藤真帆の研究協力を得て行った。内藤は6月と9月の2度ヴァヌアツでフィールドワークを行い、現地語の調査と共に、学校教育における言語状況を調べた。メラネシア地区のオーストロネシア言語のパプア諸語との言語接触の影響を調べる為、佐藤寛子が研究協力し、10月から11月にかけ約2週間パプア・ニューギニア、ニューブリテン島関係の資料収集を行った。 ニューカレドニアでは他の言語の圧迫で少数言語はますます危機的状況を深めている。また、多言語併用、言語接触により言語の変容が大きい。少しでも多くのテキスト、語彙の記述、録音が急がれる。
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