研究概要 |
[1]電子相関を考慮に入れた高精度断熱ポテンシャル面をArHCl関して求め、これを用いてファン・デア・ワールス分子ArHClの最も低いリドベリ状態へ光励起の後、及びArとリドベリ状態(C^1II)にあるHClとの反応によるArH^+とCl^-に分解する過程を解明した。この反応はArHClの(3)^1A'状態のポテンシャル面上で起こる。HClのリドベリ状態(C^1II)とイオン対的励起状態(V^1Σ^+)がほとんど同じエネルギーをもち、Arの高い電気的分極率によって中間状能ArH^+Cl^-に容易変換されてArH^+とCl^-に分解する。 [2]H_2O、CO_2分子の内殻電子を励起した状態に対するMCSCFレベルの計算を行い、ポテンシャル面を求めた。実験グループとの密接な連携により、内殻励起分子の動的過程を詳細に明らかにした。即ち、内殻励起状態の寿命は数十フェムト秒程度と、極めて短いが、その間に原子核の運動(振動)が起こり、その運動がオージェ崩壊の後に生成する分子の量子状態を大きく左右することが明らかになった。 [3]SDCIを越えて多電子励起の効果を取り込む理論として開発したMulti-Reference Coupled Pair Approximation (MRXPA)理論の改良を行った。この方法は励起状態も基底状態と同じ近似度で同時に求めることができる特徴がある。強相関系の研究に力を発揮するといえる。 [4]遷移金属原子含有分子,錯体の特に未同定状態の電子構造を解明することに主眼を置いた研究を行った。
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