研究概要 |
本研究では、チタンを含む優れた特性を持つ新規な化合物の設計を目的として、前年度から引き続きチタノシルセスキオキサンの構造や安定性、反応性についてab initio分子軌道計算を行っている。元来チタンでは優れた触媒活性を示す化合物が知られていることから、今年度は特に触媒活性能と構造との関連に着目して研究を進めた。計算方法は、6-31G^*あるいはTZVP基底関数を用い、HF, B3LYP, MP2レベルで行った。 実験によると、チタンを含むシリカは過酸化水素あるいはOOH基を持つ化合物の存在下でオレフィンの酸化反応の有用な触媒となる。そこで、我々のチタン化合物のこの反応に対する活性能を明らかにする目的で、まず最も簡単なチタン-酸素化合物である、TiH(OH)_3と過酸化水素よるエチレンの酸化反応について調べた。この反応は1)チタン化合物と過酸化水素から[Ti]-OOHが形成され、2)そのチタン過酸化物よるエチレンの酸化からエポキシドが生成されるという二段階で進行することが知られている。今回調べたTiH(OH)_3の場合、2)が律速段階であることが分かったので、ケイ素原子も含む様々なチタン化合物に関して二段階目のエネルギー障壁の計算を行った。その結果、1)エチレンのHOMO(π)とチタン化合物のLUMOとの相互作用が重要であるため、チタンの数が多い程LUMOが下がり反応に有利であること、2)ケイ素の存在はこの反応を阻害する傾向にあること、3)鎖状構造では水素が多いとflexibleなためにdeformation energyも小さく反応に有利であるが、水素が少ない場合は環やかご状構造の方が有利になる、等が明らかとなった。 また、エチレンのZiegler-Natta触媒による多量化反応を参考にした触媒活性についても計算を行い、これら環およびかご状化合物の有用性を確認した。
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