研究概要 |
水溶液中のCN^-イオンを例にとって、振動緩和時間に対する溶媒の量子効果について、経路積分影響汎関数理論に基づいた詳細な検討を行った。その結果、溶媒である水分子の量子性により、溶質分子の緩和時間は、1-フォノン過程が約4倍、2-フォノン過程で約8倍、そして3-フォノン過程では約20倍も速くなっていることが示され、極めて大きな量子効果を持っていることが明らかにされた。一方で、溶媒を古典的に取り扱っても、緩和機構、つまり溶質のエネルギーが溶媒のどのような運動モードに受け渡されるかについては、量子的に取り扱った際とほとんど同じ結果を与えた。これらのことから、計算に簡便な溶媒に対する古典近似は、緩和時間に対しては数値的に大きな値を与えてしまい、これを予測値として議論することは困難であるが、緩和機構を研究する上では充分有効であることが示された。 上記で得られた知見に従って、量子-古典混合系近似に基づいた解析を同じく水溶液中のCN^-イオンに対して実施し、これには第1水和殻の水が大きく関与していることを明らかにした。さらには、状態緩和とエネルギー緩和の間に見られる差異や、緩和初期においては、個々の一分子測定に基づくと詳細つり合いが成り立たないことなどを見い出した。 一方、量子液体に関しては、アルカリ金属原子に対してはatomic bubble,貴ガス分子に対してはsnow ball状にヘリウム原子が溶媒和することを示した。
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