研究概要 |
硫黄官能基を二つ有するシリルリチウム化合物としてジ(メシチルチオ)メシチルシリルリチウム1を合成し,その反応性を検討した。この1の合成には,トリ(メシチルチオ)メシチルシラン2のケイ素-硫黄結合を切断する方法を検討した。反応条件を検討した結果,2にTHF中,-50℃でリチウムナフタレニドを3モル量作用させると,一つのケイ素-硫黄結合が選択的に切断され,シリルリチウム1が収率79%で生成することを見出した。同様の条件下,リチウムナフタレニドを2.2モル量用いた場合には原料2が残存し,4モル量用いた場合には1の収率は大幅に低下した。また,ジ(メシチル)メシチルクロロシランを同様の方法で還元した場合にも,1の収率は大幅に低下した。ケイ素-硫黄結合の還元的切断によるシリルリチウム化合物の合成は,前例のない新しい方法である。シリルリチウム1は-50℃では安定で,クロロスタンナン,ヨウ化メチルとも反応し,それぞれシリルスタンナンおよびメチルシランを与えた。また,THF中における1の^<29>Si NMRの化学シフト値は37.4ppmであった。 また1は0℃付近で数時間で分解した。ジフェニルアセチレンを共存させると,シラシクロプロペンが生成した。同定は各種NMRスペクトル解析によりおこなった。この結果は,1のα-脱離により(メシチルチオ)メシチルシリレンが発生したことを示唆している。本反応は硫黄置換シリレンの発生法としても興味深い。
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