研究概要 |
1.シカゴ大学在籍中に開発した「任意の停留点(局所安定点、鞍点、…)領域の運動の規則性・非統計性を解析し、鞍点領域の位相空間から反応ボトルネックを抽出することを可能にする」リー正準変換摂動論プログラムの改良・高速化を行った。 2.遷移動力学を記述する重要な少数(射影)自由度を抽出し、多次元位相空間上の化学反応bottleneckおよび位相空間上の複雑な反応遷移過程を可視化する手法を新規に開発した。アルゴンクラスターの異性化反応にその手法を適用し、遷移状態領域にはエネルギーが増大するに従って、従来知られていなかった(位相空間の)反応座標と非反応性座標の間にbottleneckが形成され、それが反応の進行を阻害する方向に働くことを見出した。現在、その研究成果をJ.Chem.Phys.およびProc.Nat.Acad.Sci.USAへ投稿中である。 3.ポテンシャルエネルギー鞍部点付近の一点の相空間情報から反応が実際に生じるか否かを予め決定する「動力学的遷移規則」を新規に導出し、これまで動力学計算を実行してはじめて決定されていた反応の終状態(生成系へ至るのか反応系へ戻るのか)を一義的に一点の相空間情報だけから決まることを証明した。 1,2に関する研究成果の一部は国内の2つのシンポジウムにおいて講演(依頼)し、そのレビューを京都大学基礎物理学研究所発行の「物性研究」に執筆(依頼)した。3に関しては現在、Phys.Rev.Lett.へ投稿準備中である。
|