理論モデルに基づいて人工タンパク質を設計し、それを実際に生合成し、その立体構造や折れたたみ反応の熱力学的および速度論的解析を行う。その結果を理論にフィードバックさせることにより理論モデルを改良する。理論家と実験家の共同によりこのサイクルを繰り返し、それを通じてタンパク質の立体構造を形作っている物理化学的な原理を理解するとともに、新奇な人工タンパク質を造ることを目指した。 本研究では、設計問題を考える基礎的統計理論としてエネルギーランドスケープ理論、Zスコアを最小するアミノ酸配列を探索するためにシミュレーテッドアニーリング法をつかった。設計と折りたたみの繰り返しによる変性状態構造アンサンブルの構築とZスコアの改良によって設計された配列は高いフォールド能力を持ち、Target構造との相同性を高めている。 我々の粗視化モデルは、側鎖の微細構造が含まれていない。側鎖のぶつかり合いが生じないかを確認するため、粗視化モデルによってデザインされた10本の配列(GA1〜GA10)について、AMBER力場による全原子モデルで構造最適化を行って、そのエネルギーが最低のアミノ酸配列を最終的に理論予測配列とした(GA7)。 理論的にデザインした配列(GA7)について、DNA配列を設計し、プラスミドベスターに挿入、制限酵素で切断後、pETベクターに挿入し、大腸菌BL21(DE3)を形質転換した。生成したタンパク質を精製したところ約2mg得ることに成功した。GA7のCDスペクトルは、典型的なαヘリックスの特徴を有していたが、野生型GA moduleとは多少異なる線形を示した。
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