研究概要 |
(E)-および(Z)-2-フェニル-1-プロペニル(フェニル)ヨードニウムテトラフルオロポラート(E-1およびZ-1)の加溶媒分解反応をトリフルオロエタノール中、60℃で検討したところ、E-1の反応は10分程度で完結するのに対して、Z-1の反応は2週間以上かかった(速度比約5000)。生成物分布は両者で全く異なり、E-1はヨードベンゼン、1-フェニル-1-プロパノン、1-フェニルプロピン、1-フェニル-2-プロパノン、フェニルプロパジエンを与えるのに対して、Z-1は前三者しか与えなかった.このような生成物分布および反応性の違いは,E-1がβ-フェニル基関与によってベンゼニウムイオンを生成し、さらに転位してα-メチルビニルカチオン、α-フェニルビニルカチオンを経由して反応するのに対して、Z-1はβ-メチル基関与でα-フェニルビニルカチオンを経て反応するものとして理解され、第一級ビニルカチオンは生成していないと結論される。メタノールおよび酢酸溶媒中における結果も同様の反応スキームで説明される。 さらに,光学活性な(R)-4-メチルシクロヘキシリデンメチル(フェニル)ヨードニウム塩の加溶媒分解を調べたところ,主生成物の(R)-4-メチルシクロヘプタノンの光学純度は完全に基質と等しかった。この結果から、この反応においてもアキラルな第一級ビニルカチオンは中間体として含まれていないと結論できる。反応はβ-σ-結合関与によって直接転位カチオンを生成して進行しているものと考えられる。
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