電子ドナー分子であるフェノチアジンを末端官能基とするフェノチアジンアルキルチオール存在下、Au3+をNaBH4で還元することにより、レドックス活性な金ナノクラスター(PTZ-C8-Au cluster)を合成した。この金クラスターの粒子径および分散性を調べるため、高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)により観察したところ、PTZ-C8-Auclustetの粒子直径は、2-2.5nmで粒子分布域が狭く、非常に粒子径がそろっていることが分かった。さらに、クラスター溶液の濃度を変化させ、TEM観察を行なったところ、低濃度のときは粒子が分散し、高濃度のときは集合することが分かった。フェノチアジンを含まない金クラスターではこのような現象が見られないことから、金表面を修飾しているフェノチアジンが粒子の形成および分散性に深く関与していることが分かった。一方、PTZ-C8-Au clusterの電気化学的挙動を調べたところ、フェノチアジン骨格に基づく一組の可逆な酸化還元応答を示すことから、クラスター末端のフェノチアジンを1電子酸化剤(NOBF4)により、化学的に酸化させたところ、UV-VISスペクトルからカチオンラジカルの集合体(ポリカチオンラジカル)の生成を確認した。さらに驚くべきことに、酸化剤のNOBF4を過剰に加えることにより、金クラスターが容易に分解することが分かった。
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