今年度の課題研究では、水素酸素型燃料電池の反応機構と金属イオン置換ゼオライトへのCO分子の吸着構造について調べた。燃料電池は、クリーンなエネルギー源として注目されており、その内部で進行する反応機構については、以下のような素反応に分けて考えることができる。(1)水素は白金電極表面で解離し、(2)原子状で白金層を通過する。(3)酸素分子は他方の白金電極表面で解離する。(4)酸素原子と水素原子とからOHラジカルが生成する。(5)OHラジカルはさらに水素原子と反応して水を生成する。 これらの反応へのアプローチとしては、固体触媒表面での反応解析の方法が用いられるが、水素原子の白金層通過や、系の電荷の効果などが、新しい因子として加わる。計算の結果、水素原子がPt層を通過する過程が最も活性化エネルギーが高いことがわかった。2番目は水の生成過程であるが、実際には多数の水分子が存在するので、このエネルギーは低下すると思われる。 金属イオン置換ゼオライトは、一時期、環境触媒として盛んに研究され、現在は一段落した感があるが、反応サイトなどの反応機構上、重要な問題は未決着のまま残されている。COをプローブ分子として種々の金属イオン置換ZSM-5に吸着させ、吸着熱と振動スペクトルを測定することにより、金属イオンの吸着サイトとして、2配位と3配位サイトが存在することを報告されている。また、アルカリ金属(Li、Na、K)置換ゼオライトはCuとは違った性質がある事がわかっている。本研究では吸着安定構造を求め、吸着エネルギー、赤外振動数、吸着分子上の電荷などから、金属による相互作用の違いを系統的に調べた。
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