研究概要 |
本研究では,知的プリプロセスアルゴリズムとして,生体の網膜を模擬した動き検出機能と,画像認識のための特徴抽出機能の実現を目指している。 まず,前者の成果としては,対象物の動き検出をするために必要な,局所適応機能を有するエッジ検出機能を,高等動物の網膜の情報処理機能に学んで集積化した。その基本回路として,極めてシンプルなアナログ回路を開発した。SPICEシミュレーションによって,明るさが2.5桁異なる領域が同一画面内に含まれていても,画像のエッジを検出できることが分った。また,テストチップによって,局所適応機能についても確認された。上記のエッジ検出機能により得られた対象物のエッジの二次元空間での動き検出機能を検討した。二次元および三次元動き検出の基礎として,下等動物の網膜・脳機能に学んで,直進する物体の運動方向と速度を検出するネットワークをアナログ回路で構成した。SPICEシミュレーションの結果は理論値とよい一致を示した。そこでは,エッジ信号を二値化して,アナログ回路の誤差が階層構造のネットワークで重積することを防ぐことも試みた。 また,後者の成果としては,実際の画像認識において重要となる,混合雑音により劣化した信号の復元を試みた。ウェーブレットニューロン(WN)と局所統計情報に基づく新しいフィルタを用いて,(1)平均化処理に近い雑音除去と(2)鮮鋭化という相反する機能が,効率的に実現できることを実画像を用いて確認した。本フィルタは,WNの持つ高非線形記述能力,学習のグローバルミニマム収束性に基盤をおくので最適設計が可能である上に,局所統計情報として分散値も考慮することで,より高度な信号復元も実現している。さらに,本フィルタ処理を実時間で行うために,WNのハードウエア実装も検討した。現時点では,汎用のCPUに比べ,150倍以上の高速化が可能であることを確認している。
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