研究概要 |
前年度に引き続き糸状菌由来ポリケタイド合成酵素の構造と機能解析を試みた。 (1)Aspergillus fumigatus黒色胞子色素生合成に関与するポリケタイド合成酵素 Asp. fumigatus由来の黒色色素生合成遺伝子クラスターの機能解析を行い、Alblpがナフトピロン合成酵素であることを明らかにした。次いで同一クラスター中に存在する機能未知のayg1遺伝子による形質転換体より調製した粗酵素液を用いるin vitroでの反応から、ヘプタケタイドのナフトピロンがAyg1Pにより二次的に側鎖切断を受けペンタケタイドのT4HNが生成するというこれまでに例のない新しいメラニン生合成系の存在を実証することができた。 (2) Alternaria solani由来還元型ポリケタイド合成酵素遺伝子のクローニング PCRおよびライブラリースクリーニングを組み合わせソラナピロン生産株Alt. solaniよりPKS生合成遺伝子クラスターをクローニングした。その全長塩基配列を決定し、1個のPKS、1個の酸化酵素、および2個のCytochrome P-450と推定されるORFの存在を明らかにした。このPKSにはKeto Reductase, Enoyl Reductase, Dehydrataseといった還元型ポリケタイド合成酵素に特徴的なドメインとともにMethyl Transferaseドメインも存在することから、このクラスターがソラナピロン生合成に関わるものと推測している。 (3)キメラ型芳香族ポリケタイド合成酵素作成によるC-末領域機能の解析 Asp. nidulans由来ヘプタケタイド合成酵素WAのC-末領域に存在し、従来Thioesteraseと考えられていたドメインがClaisen型閉環反応に関わることを明らかにした。WAとドメイン構造が全く同一のウリ類炭素病菌Colletotrichum lagenarium由来のペンタケタイドT4HN合成酵素PKS1とのキメラタンパクを作成し、異種糸状菌Asp. oryzaeで発現したところ、既知のペンタケタイド2種及びヘキサケタイド1種の他、新規ヘキサケタイドの生産を確認した。これらの結果は、WAのC-末領域がヘキサケタイド中間体のClaisen型閉環も行いうること、またこの領域がPKS1由来のN-末側との相互作用によりポリケタイド鎖長の制御にも関わっていることを示す事実であり、さらに他のキメラ体や変異タンパクの作成により、反応制御の詳細を検討している。
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