研究概要 |
ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori)は人の胃の中に棲息するらせん菌であり,胃潰瘍,十二指腸潰瘍,および胃ガンの原因菌と考えられている。単剤のみで抗ヘリコバクターピロリ活性をしめし,かつ副作用のない希少系鍵物質を植物資源より探索し,新規抗ヘリコバクターピロリ剤の分子設計へと展開することを目的とする。ブラジル産生薬エキスライブラリのランダムスクリーニングによって抗ヘリコバクターピロリ活性の認められた生薬の中の一つである,Myroxylon peruiferum,Leguminosaeより単離されたcabreuvin(MIC7.8μg/mL)をリード化合物とした広範な周辺化合物の探索を行った。その結果,cabreuvinの構造をその構造内に含有するrotenoneの12位を水酸基に変換した12-hydroxyrotenone(MIC0.08μg/mL)はクラリスロマイシン同等の強い活性をもつことが明らかとなった。 Rotenone以外の化合物をもとにした誘導体の作成を行うことを目的として,D.malaccensis(MIC2μg/mL)より,新規化合物derrisinを含む,rotenoidを12種単離した。それらのうちdeguelin(MIC0.6μg/mL),tephrosin(0.3μg/mL),toxicarol(0.3μg/mL)についてはrotenoneより強い活性を持つことが明らかとなった。一方,12-hydroxyrotenoneの作用機序については,rotenoneと同様の呼吸鎖阻害剤であることが明らかとなった。
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