ヒトデ卵ゼリー中のARISとasterosapは精子の先体反応は誘起する。これらのシグナルは精子膜上の受容体を介して精子内部に伝達される。我々は既にasterosapの受容体を単離、同定し、グアニル酸シクラーゼであることを明らかにしている。今回まず、精子にasterosapを添加し、経時的に細胞内cGMP量を測定したところ、asterosap濃度依存的にcGMP量は変化し、150msecをピークとするきわめて早い反応であることを示し、ピーク時のcGMP量は平常時の37倍にも達しに。また、我々はARISとasterosapnの両者が同時に精子に作用しなければ先体反応を誘起できないことを発見し、この現象を先体反応の"前処理効果"と呼んできたが、今回この現象に着目し、ARISとasterosapそれぞれの精子へのシグナルがどのような伝達系を介し、相互作用しあっているのかを明らかにしようとした。正常海水中でasterosapによる前処理の後5分後、再度asterosapを加えて、精子細胞内cGMPの上昇について調べたところ、先体反応と同様に前処理効果が起こることを明らかにした。しかし、ARISによる前処理では次にasterosapを加えてもcGMP濃度は上昇し、前処理効果は見られなかった。asterosapによる前処理効果は低pH海水中では見られないことから、細胞内pHが上昇するとグアニル酸シクラーゼを不活化し、前処理効果を起こしている可能性も考えられる。
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