発光巻き貝ラチア生物発光の分子基盤研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12045226
• 研究機関: 電気通信大学
• 研究代表者: 丹羽 治樹 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (20135297)
• 研究分担者: 牧 昌次郎 電気通信大学, 電気通信学部, 助手 (20266349) ; 平野 誉 電気通信大学, 電気通信学部, 助教授 (20238380)
• キーワード: 生物発光 / ラチア / ルシフェリン / ルシフェラーゼ / 糖タンパク / アミノ酸配列 / c-DNA / クローニング

研究概要

(1)先にラチアルシフェラーゼの精製に世界で初めて成功したので今年度は引き続き精製したラチアルシフェラーゼのキャラクタリゼーションを行った。その結果、ラチアルシフェラーゼは等電点(pI)5.5〜6の酸性糖タンパクであり、発光基質であるラチアルシフェリンに対するKm値は約24μMであることが判明した。さらにリジルエンドペプチダーゼによる酵素消化を行い、ペプチド断片を分離し、アミノ酸配列の決定を試みた。その結果、つぎのような部分アミノ酸配列KVSDCDLTATWRGSRYMK、KGRSYSFVLEGTGK、KGYEGIRVQTPIKを持つことが判明した。
(2)ラチアからm-RNAを抽出し、cDNAライブラリーを作成した。続いて先に判明したした部分アミノ酸配列に基づきプライマーを構築し、ラチアルシフェラーゼをコードするcDNAのクローニングを進めている。
(3)ルシフェリン類縁体を化学合成し、発光活性を精査し、ラチアルシフェラーゼの基質特異性を検討した。その結果、エノールエステル部が天然型のギ酸エステルではない安息香酸エステル型が、天然型ルシフェリンより発光速度が遅いこと、またルシフェラーゼの認識部と考えられるシクロヘキセン環が単なるフェニル基に置き換わった類縁体は全く発光活性がないが、2,6-ジメチルフェニル基になった類縁体には発光活性が見られることなど発光反応機構を解明する上で重要な新知見をいくつか得ることが出来た。

研究成果

• [文献書誌] S.Kojima: "Improved Syntheses of Watasenia Preluciferin (Coelenterazine) and Watasenia Luciferin (Coelenterazine Disulfate), and Site Specific Syntheses of the Coelenterazine Monosulfates"ITE Letters on Batteries, New Technologies and Medicine. 2,No.3. 393-397 (2001)
• [文献書誌] K.Kobayashi: "Purification and Properties of the Luciferase from the Marine Ostracod Vargula hilgendorfii.""Bioluminescence and Chemiluminescence," ed by J.F.Case, P.J.Herring, B.H.Robinson, S.H.D.Haddock, L.J.Kricka, and P.B.Stanle : World Scientffic, Singapore. 87-90 (2001)
• [文献書誌] S.Maki: "Hydrogenolysis-free Hydrogenation by Pd Black Powder Catalyst"Synlett. No.10. 1590-1592 (2001)
• [文献書誌] M.Ohashi: "Intramolecular Electron Transfer Induced Cleavage of Dioxetanes Observed in Fast Atom Bombardment Mass Spectrometry"Eur. J. Mass Spectrom.. 7. 441-445 (2001)
• [文献書誌] Y.Imai: "Fluorescent Properties of Phenolate Anions of Coelenteramide Analogues : The Light-emitters Structure in Aequorin Bioluminescence"J. Photochem. Photobiol., A (Chemistry). 146. 95-107 (2001)
• [文献書誌] S.Maki: "Effect of Solvent and Hydrogen during Selective Hydrogenation"Tetrahedron Lett.. 42,No.47. 8323-8327 (2001)