研究概要 |
1.β-Iononeを出発原料として天然型ラチアルシフェリンおよび類縁体を合成した。ニュー一ジーランドにて採集したラチア(Latia neritoides)より粗ルシフェラーゼ溶液を調製し、発光活性を検討した。その結果基質の2,2,6-cyclohexene環がフェニル基になった類縁体には発光活性が見られないが、2,6-ジメチルフェニル類縁体には弱いながらも発光活性を示すという、環構造部の認識に関する興味ある結果も得た。側鎖の類縁体においては天然型のエノールフォルマートのみならずエノールアセートやエノールベンゾアートでも発光活性があることが判明した。また発光速度はエノールフォルマート、エノールアセート、エノールベンゾアートの順に大幅に遅くなることが判明し、エノールエステル部の加水分解速度が発光にのkineticsに大きく影響することを見出した。そこで一連のp-置換ベンゾアート類縁体について発光速度を検討したところ、p位に電子吸引性置換基を持つベンゾアートアナログは電子供与性置換基をもつ物より発光反応が速くなる傾向が確認された。 2.ニュージーランドにて採集したラチアより、硫安分画、ゲル濾過、アフィニティーカラム、陰イオン交換クロマトグラフィー、再びゲル濾過を行うことによりラチアルシフェラーゼを単一成分として得ることができた。精製したルシフェラーゼは分子量約2,000の糖鎖が結合したN結合型糖タンパクであり、分子量31,000の単量体タンパクの6量体であることが判明した。精製したルシフェラーゼは合成したラチフルシフェリンにより発光することが確認され、発光スペクトルは生物発光と完全に一致した。このことよりラチアの発光系における最小要素は酸素、ルシフェリン、ルシフェラーゼであることが示され、光のエミッターはルシフェラーゼに内在していることが確定した。また従来言われてきた「パープルプロテイン」は発光反応自身には必須ではないことも証明された。さらに糖鎖と発光活性の相関を検討したところ糖鎖の存在がルシフェラーゼの発光活性の発現に深く関与していることが示された。 3.ラチアルシフェラーゼをコードするcDNAのクローニングに成功し、ラチアルシフェラーゼの294個のアミノ酸の1次配列を決定することができた。
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