研究概要 |
発光甲虫のルシフェリン・ルシフェラーゼ反応では同じ発光基質でありながら発光色が異なるが,この発光色を決定するメカニズムは充分に理解されていない.本研究では発光色,発光色のpH感受性が異なるルシフェラーゼを用いた酵素・基質複合体の高次構造解析を最終目的としているが,本年度は鉄道虫由来の赤,緑発光色ルシフェラーゼの高発現系及び精製系の確立,イリオモテボタルルシフェラーゼを基に遺伝子工学的手法による変異体の作成及び構造機能相関による活性部位の探索を行った.はじめに,インテインタンパクをルシフェラーゼN末端に融合させた結果,比較的安定に高発現するシステムを,併せて,キチン結合アフニティクロマトグラフにより精製可能であることを明らかにした.現在,さらに安定に発現・精製できる条件を検討中である.一方,pH感受性の異なるホタル科ルシフェラーゼとホタルモドキ科ルシフェラーゼの一次構造を解析,それぞれに特異的に保存されているアミノ酸残基を見出し,相互にアミノ酸残基を置換した変異体を作成した.その結果,イリオモテボタルルシフェラーゼアミノ酸残基226番目の変異体では,野生型が550nmの最大発光波長を示すのに対し,アミノ酸残基の嵩高さ等に相関して580〜590nmまで変化することが明らかとなり,このアミノ酸残基が発光色を決定する上で重要な活性発現部位であることを明らかとした.しかしながら,pH感受性に関わる活性部位がまだ未同定であるので,今後さらに活性部位の探索を計画する.
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