研究概要 |
本特定領域研究は,新世紀に向けて,新しい自然科学の飛躍的発展に寄与する重要機能性分子を,重要かつ不可思議な未解明生物現象に着目して発見し,世に示すところに特徴がある.以下に研究代表者らの取組について述べる. 1)トガリネズミは獲物に麻酔をかけ,巣穴に貯蔵するといわれている.この麻酔物質を明らかにすることを目的として,北米に生息するブラリナトガリネズミBlarina brevicaudaの唾液腺を抽出しマウスに対する急性毒性を指標として分離・精製を進めた結果,活性を示す画分の主成分は分子量1,200程度のペプチドであることがわかった。現在,アミノ酸配列の決定を行っている. 2)オニヒトデAcanthaster Planciはサンゴを食害し,しばしば壊滅的な被害を与える.ラッパウニの内臓にオニヒトデが誘引されるという生物現象に基づき,オニヒトデ誘引活性を指標に精製を進めたところ,活性本体としてアラキドン酸,α-リノレン酸を単離した.さらに,α-リノレン酸を用いて海洋で誘引実験を行ったところ,9日間で7個体のオニヒトデを捕獲することに成功した.また,サンゴのオニヒトデ誘引活性物質の一つがアラキドン酸であることも明らかにした. 3)沖縄の大型の2枚貝マベガイPteria penguinの内蔵および外套膜についてマウスに対する急性毒性を指標に分離・精製を進め,活性物質としてプテリアトキシンA〜Cを単離した.これらは非常に微量しか得られなかったが,800MHz NMRおよびnano-ESI-MS/MS測定を駆使して,ナノモルレヴェルでその構造を決定することができた 4)沖縄産のイワカワハゴロモガイ由来の毒性物質のうち,最も活性が強いピンナトキシンB,Cの構造をnano-ESI-MS/MS測定などの手段により,明らかにした.さらに,化学誘導することで絶体立体構造も決定することができた.また,イワカワハゴロモガイの高極性画分からピンナミンを単離し,その絶体立体構造を決定した.現在,合成を進めている.
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