本特定領域研究では、微量天然分子の構造決定を以下の2課題を中心に行った。 ホヤ卵由来の精子活性化物質の化学構造:共同研究において、ホヤ卵由来の、ホヤの精子を活性化し誘引する物質の構造解析を行った。その試料重量は数g(数ナノモル)と推定されたが、NMRの微量用プローブを用いて良好な二次元スペクトルの測定に成功し、その化学構造を新奇硫酸化ポリヒドロキシステロイドであると推定した。現在化学合成によって構造の確認を行っている。 タンパク質の糖化によって生成する修飾アミノ酸の化学構造:コラーゲンは寿命の長い細胞間マトリックス蛋白質であり、糖尿病などで血糖値が上昇した折には、糖化を受けやすい蛋白質でもある。この蛋白質の糖化が失明や関節炎などのいわゆる糖尿病合併症の原因となっている。コラーゲンの糖化アミン酸の構造解析を行い、約10μgの試料量で良好な1次元および二次元NMRを測定して構造をN^ω-carboxymelhyl-arginineと決定することができた。
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