研究概要 |
アンフォテリシンB(AmB,1)は、真菌による感染症治療に広く使われている重要な医薬である。その抗真菌作用は主に真菌細胞膜に存在するエルゴステロールを認識してイオンチャネル複合体を形成することによって発現されるとされているが、複合体の機構はほとんど分かっていない。AmBとエルゴステロールで形成される分子会合体の構造を解明するためには、会合体を安定化しなければならない。そこで、AmB同士の連結体(二量体)の例にならって、ステロールとAmBの連結分子を化学的に調製した。連結分子の調製には、AmB分子中最も反応性の高いアミノ基を利用することとし、ステロールの3位ヒドロキシル基との間をカルバメートで結合することによって、エルゴステロール連結体(AmB-Erg)とコレステロール連結体(AmB-Cho)を調整した。両者のリン脂質二重膜に対するイオン透過性を測定したところ、AmB-ErgはAmB-Choに比べて顕著に強い活性を示した。また、AmBの標識体の固体NMRの測定によって、AmBメチルエステル(AME)の標識13Cとリン脂質のリン原子の平均距離が比較的短いことが判明し、高濃度でもAmBがリン脂質に分散していることが示唆された。
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