液晶NMR法の構造解析法としての展開を計ることが本研究の目的であるが、本年は、まず、従来の^1H-NMRの他に^<13>C-NMRの検討を行った。その結果、^<13>CについてのMAS/NMAS液晶NMR法の開発を行うことができた。即ち、固体NMR法の基本手法であるマジック角試料回転(MAS)法およびそれの改良型であるNMAS法を液晶NMRに導入することは、複雑な天然生理活性物質の膜類似環境下の構造解析のために重要であることを考え、^<13>C-NMRをベースとしてこの方法を2-Vinyloxypyridineなどに適用しその構造決定を行うと共に、この方法の特徴を次のように明らかとした。(1)^<13>C-NMRではスペクトルは^1Hより単純であるが、^1Hが高次分裂を示す場合は^<13>Cにもその影響が表れるので、MAS/NMAS法による検討が必要である。(2)^<13>C液晶NMRは、^1H液晶NMRに比べれば構造や配向バラメータの精度は落ちるが、より簡単に重要な基本構造を決定するには大変好都合である。(3)^<13>C-NMRはパターンが単純であるため、スペクトル解析に任意性が表れる恐れがあり、これを避けるため基本構造を考慮しながらの解析が必要となる。 次に、上の液晶NMR法で確認された2-Vinyloxypyridineの平面構造を通常の溶液中で確認するため、^1H選択緩和実験を行った。その結果、これによっても平面構造が確認出来た。 以上のように、本年は^<13>C液晶NMR法の開発を行い、2-Vinyloxypyridineに適用しその平面構造を実証でき、C-H型プロトンの分子内水素結合を確認した。今後は、このような分子内水素結合を多くの天然物について見つけると共にその役割を明らかとすること、および、方法論的には、ネマティックコレステリック液晶のような光学活性な溶媒環境を利用した液晶NMR法の展開が目標である。
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