研究概要 |
化合物の詳細な構造を解明することは、その化合物がもつ特異な機能を理解する上で不可欠である。機能と構造との相関が解明できれば、より高次の新しい機能をもった分子を設計することが可能となる。このように構造の知見は機能の理解、予測、設計などに重要である。我々はNMR化学シフト計算法を確立し、任意の構造に対する理論的な化学シフト値を正しく求め、それを用いてフレキシブルな化合物の動的な配座平衡の解析を行うため、化学シフトを用いる解析法を開発した。われわれは化学シフト値の構造依存性は分子内に存在する芳香環、多重結合やヘテロ原子を含む官能基などからの誘起遮蔽効果を見積もる方法により求めている。今回,以前に求めたエーテルの場合と同様な手法を用いて、2級アミンとナフタレンの磁気異方性効果を求めた。それにより,ナフタレンの磁気異方性効果は周辺10π電子系に起因することを明らかにした.さらにキラルな二級アルコールの絶対配置の決定に化学シフト計算法を適用した.インダン骨格を含む堅固なキラルなカルボン酸を新規に合成し,メントールをはじめとする各種のキラルな二級アルコール体とのエステルを合成し,新規不斉補助基がキラルな二級アルコール体に及ぼす誘起磁気遮蔽効果を求めた。この誘起磁気遮蔽効果を再現すべく,新規不斉補助基をもつエステル体について分子動力学計算を行い、そこから得られる動的構造を用いて化学シフト計算法により誘起シフトを計算したところ,実測の誘起磁気遮蔽効果をよく再現し,計算法によるキラルな三級アルコール体の絶対配置を決定することに成功した。その他,動的構造を用いて化学シフト計算法により誘起シフトを計算する手法で,超分子の溶液中における動的構造解析に成功した.
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