研究概要 |
これまでに発見された平滑筋収縮物質の中で最も強力な作用を示す物質として、21個のアミノ酸からなる生体内ペプチドホルモンのエンドセリン(1-21)が知られていた。我々はこれとほぼ同等の平滑筋収縮作用を示すだけでなく、意外な生理機能として白血病遊走(ケモカイン)作用を合わせ持つ31個のアミノ酸からなる新規生理活性ペプチドET(1-31)を生体内に発見した。さらにこのペプチドはET(1-21)の細胞膜レセプターのETA,ETBレセプターには全く結合しないことから、新しいレセプターを介する作用機序が推定される。 本年度の研究により、エンドセリン(1-31)は顆粒球と単核球に対して強いケモカイン作用を示し、その強さは10^<-6>Mと比較的高濃度ではあるが強い顆粒球に対するケモカイン作用を示すIL-8と、あるいは単核球に対するケモカインを示すMCP-1とほぼ同等の強いケモカイン作用を示した。なおエンドセリン(1-31)のケモカイン作用は、エンドセリンがこれ等の白血球に作用してIL-8やMCP-1を誘導して作用するのではなく、エンドセリン(1-31)がレセプターを介して直接作用していることが示唆された。なお気管支喘息などで気管支粘膜上皮におけるエンドセリンの発現の増加と、好酸球や肥満細胞の増加が認められるが、エンドセリン(1-31)自体に好酸球の遊走作用のあることが明かとなった。なおこれらのエンドセリン(1-31)の作用はETAレセプターのアンタンゴンスのBQ123で阻害され、ETBレセプターのアンタゴニストのBQ788では阻害されなかった。しかし、CHO細胞に発現させたETAレセプターにエンドセリン(1-31)が直接結合しなかったことから、新たなETAレセプター様のレセプターの存在が示唆された。
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