研究概要 |
(1)繊毛虫Blepharisma japonicumが栄養増殖過程から有性生殖過程にはいる時おこる接合対の形成と、(2)繊毛虫間の補食-被食の関係に着目し、これらの生命現象を司る鍵化学物質を探索するとともに、その生命現象のメカニズムを分子レベルで解明することを目的として研究を行った。 1.ブレファリズマの接合誘導物質ガモン1(ブレファルモン)の構造研究 B.japonicumには接合型細胞I,IIが存在し、貧栄養状態になるとそれぞれの細胞が接合誘導物質ガモン1,2を放出し、相補的細胞に作用することでI型とII型細胞が接合し有性生殖過程に入る。今回新たにガモン1を単離し、その全アミノ酸配列を決定した。ガモン1の分子量が20kDaから30kDaに変更になったことから、N-アセチルグルコサミン4、マンノース3からなるアスパラギン結合型糖鎖構造(GlcNAc β1->2Man α1->3),(GlcNAc β1->2Man α1->6)Man β1->4GlcNAc β1->4GlcNAc β1->Asnを新しく推定するに至った。ガモン1のアミノ酸配列から糖鎖の結合位置は4カ所まで可能であるが、糖鎖の質量比は分子量の5%であると定量されいることを考慮すると、ガモン1には、この糖鎖が1つ結合していることになる。 2.異毛目繊毛虫の自己防御物質 stentor coeruleusがもつ色素顆粒の自己防御活性について検討した。(1)S.coeruleusと捕食繊毛虫D.margaritiferとの相互関係を調べ、(2)色素をもつ通常のS.coeruleus細胞と人工的に脱色したS.coeruleus細胞の被食割合を比較し、(3)合成で得たステントリンのD.margaritiferを含む7種の繊毛虫に対する毒性を検討した結果、S.coerueusの色素顆粒が自己防御器官として機能し、色素ステントリンがその化学的要因であることを明らかにした。 また、Spirostomum teresがもつ自己防御物質の探索を行った。S.teresの大量培養は困難なので、培養細胞を低温にさらしたコールドショック法により細胞を殺すことなくエクストルゾームを放出させ、このエクストルゾーム放出液の酢酸エチル可溶部に毒性物質の存在を確認した。さらに、ゾウリムシへの致死毒性を指標に精製し、毒性物質を微量ながら単離した。
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