研究概要 |
(1)繊毛虫ブレファリズマが栄養増殖過程から有性生殖過程にはいる時おこる接合対の形成と、(2)繊毛虫間の捕食-被食の関係に着目し、これらの生命現象を司る鍵化学物質を探索するとともに、その生命現象のメカニズムを分子レベルで解明することを目的として引きつづき研究を行った。 1.ブレファリズマの接合誘導物質ガモン2(ブレファリズモン)の受容体 繊毛虫Blepharisma japonicumには接合型細胞I, IIが存在し、貧栄養状態になるとそれぞれの細胞が接合誘導物質ガモン1,2を放出し相補的細胞に作用することで、I型とII型細胞が接合し有性生殖過程に入る。ガモン2の受容体を見いだすことを目的に光親和性標識体を分子設計しその合成を検討した。今回、予備実験としてそのモデル化合物N-ベンゾイルブレファリズモンを新たに合成し、接合型細胞Iを用いその生物活性を検討した。予期したとおり接合誘導活性は全く認められなかったが、接合誘導阻害活性を確認した。 2.繊毛虫の自己防御物質 2-1.Climacostomum virensの自己防御物質 繊毛虫Climacostomum virensから捕食性繊毛虫に対する毒性成分クリマコストールを単離し、その構造決定・合成をすでに報告した。今回さらにその活性画分を精査し、クリマコストール同族体2種の化学構造を推定し、合成によりその構造を確認した。 2-2.Spirostpmum teresの自己防御物質 繊毛虫Spirostomum teresがもつ自己防御物質の化学構造について引きつづき検討した。s. teresのエクストルゾームにゾウリムシへの致死活性が確認できたので、今回は、全細胞から活性成分を検索した。細胞を70%エタノールで滲出し、可溶部を酢酸エチルで抽出し活性部を得た。MeOH/ジクロロメタンの溶媒系を用いシリカゲルTCLで分離精製することにより、新規な毒性物質スピロストモンを単離した。NMRを含め各種スペクトルからその化学構造をspiro[2,5-dimethyl-5,6,7,8-tetrahydronaphtalene-1,4-dione-8,6'-pyran-2',5'-dione]と推定した。
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