研究課題/領域番号 |
12045257
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研究機関 | 青森大学 |
研究代表者 |
栗原 堅三 青森大学, 大学院・環境科学研究科, 教授 (00016114)
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研究分担者 |
柏柳 誠 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助教授 (20169436)
森 哲哉 青森大学, 工学部, 助手 (60295954)
柏倉 正 青森大学, 工学部, 教授 (70115161)
庄司 隆行 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (00241349)
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キーワード | サケ / 母川回帰 / アミノ酸 / ヒメマス / Y迷路 / 洞爺湖 / 支笏湖 / 行動実験 |
研究概要 |
サケ科魚類の多くが自分の生まれた川に嗅覚を利用して正確に回帰して産卵することはよく知られた事実である。しかし、魚が母川を識別するための匂い(母川物質)としてどのような物質を用いているのかは未だに明確ではない。昨年まで我々は河川水の組成分析と電気生理学的実験を行い、アミノ酸が有力な候補であることを推論してきた。しかしながら、この仮説を検証するためには、行動実験を行う必要がある。そこで、魚が母川水の流れに対して選択的に遡上する性質を用いて行動学実験による母川物質の同定を試みた。選択実験には屋外に設置したY字水路を用いた。実験魚として、ヒメマスOncorhynchus nerkaを用いた。ヒメマスは洞爺臨湖実験所から洞爺湖に放流され成熟後母川に回帰した成熟魚と支笏湖産の成熟魚の2種を用いた。最初に、ヒメマスの母川水に対する選択性について調べた。二つのアーム最上流部からそれぞれ母川水、洞爺湖水を流したところ、洞爺湖回帰ヒメマスは2時間以内に5尾中5尾が母川水アームに遡上した。一方支笏湖産ヒメマスは、5尾を用いて繰り返し実験を行った結果、両アームにほぼ50%の割合で遡上し、選択性は全く見られなかった。このように、このY字水路を用いることにより、実験室レベルでヒメマスの母川遡上を観察出来ることが明らかになった。つぎに、アミノ酸で再現した人工母川水に対する行動を観察した。回帰シーズンの最後期であったため十分な魚が得られず2尾のみの実験であったが、2尾とも人工母川水アームに遡上した。この結果はアミノ酸のみでも母川水と同じ匂いを再現できる可能性を示しており、母川物質の本体はアミノ酸であることを示唆している。ただし、例数が少ないので、最終的な結論は、今秋の実験を待たなければならない。
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