研究課題
特定領域研究
細胞内の情報伝達に関わる様々な蛋白質がリン酸化脱リン酸化されることが知られている。リン酸化酵素(キナーゼ)に対する選択的阻害剤が多数開発されているのに比べて、脱リン酸化酵素(ボスファターゼ)の阻害剤は数が少なく、ボスファターゼの細胞に対する機能を解析するためには、その阻害剤開発が必要である。本研究課題では、細胞機能の制御に関わるホスファターゼに対する特異的阻害剤を開発し、蛋白質のリン酸化反応の生理的意義を解析することを目的として研究を行った。1.VHR阻害剤4-isoavenaciolideの化学生物学的研究微生物代謝産物から、デュアルスペシフィシティーボスファターゼ(DSPase) VHRに対する阻害剤のスクリーニングを行った。その結果、Neosartorya菌が産生する4-isoavenaciolide(4iA)が、強力なVHR阻害活性を示すことを見出した。4iAはMichael付加によって、VHRの活性中心に存在するCys124と共有結合し、阻害活性を示すことが示された。DSPaseは、活性中心にCXXXXXRモチーフを有することから、4iAに感受性が高いと考えられる。2.セリンスレオニンボスファターゼ阻害剤phoslactomycin類の生合成研究Streptomyces sp. HK803より単離されたphoslactomycin(PLM)類はシクロヘキサン部分構造をスターターユニットとするポリケチドであり、セリンスレオニンボスファターゼ(PP2A)選択的な阻害剤活性を示すことを報告してきた。本研究では、PLMの生合成遺伝子クラスターをクローニングした。さらに、安定同位体標識した前駆体の取り込み実験から、シクロヘキサンカルボン酸(CHC)が6種類のPLM誘導体(A-F)に直接取り込まれることを明らかにした。全てのPLM誘導体の共通前駆体としてPLM-Bが生合成され、それに引き続きPLM-Bが水酸化・アシル化を受けて他の誘導体が生合成されることが示唆された。
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