研究概要 |
鎖状に連結した(1次元chain)スピン系が2本に結合した系からなる梯子格子スピン系において、スピン-重項基底状態と励起状態との間にスピンギャップが形成される。このスピンギャップはキャリアをドープすることにより超伝導ギャップへと移行することが指摘されている。また、このギャップ形成は銅酸化物高温超伝導体に見られる擬スピンギャップとの関連で興味が持たれている。本研究では、キャリアドープ可能な1次元chainと梯子格子をもつ単結晶試料Sr_<14-x>Ca_xCu_<24>O_<41>および反強磁性試料Sr_<14-x>La_xCu_<24>O_<41>のNMR測定をおこない、ホール分布とその局在・整列と磁気秩序による磁場の発生に伴い微細構造を示すCu-NMRスペクトルを観測した。得られた研究成果は、 (1)梯子格子物質,Sr_<14-x>A_xCu_<24>O_<41>A=Ca,Y,La)の単結晶試料でNMR測定結果から、スピンギャップは梯子層へのホール注入により大きく減少することが明らかになった。 (2)梯子格子物質,Sr_<14->Cu_<24>O_<41>に含まれる一次元鎖サイトの緩和時間の温度変化と、擬一次元鎖のみをもつCa_xCuO_2のNMR測定結果と比較検討した。 (3)単結晶試料Sr_<14-x>La_xCu_<24>O_<41>のNMR測定をおこない、磁場誘起スタガード磁化の磁場依存性、温度依存性の詳細な知見を得て低エネルギー励起を解析した。これにより、空間に一様に分布し空間変動する微少磁気モーメントの起源を明らかにした。すなわち、低次元スピン系において量子コヒーレンスを乱した時に現れる「端」効果による局所磁気モーメントの出現によるものである。
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