研究概要 |
スピンギャップと反強磁性体、超伝導体と反強磁性体あるいは異なる軌道配列をもった強磁性相をもつ物質群に着目して、キャリアドーピングや磁場などによる量子相転移やその近傍での他自由度が関連したゆらぎに着目して以下のような研究を行った。 1,金属と絶縁体のふたつの強磁性相が現れるLa1-xSrxMn03(x=1/8)に関して、遠赤外分光を用いてフォノンの不安定性を研究した。その結果、ベンディングモードの領域に顕著な異常が現れること、MnO6八面体が互いに回転するような結晶対称性が起こるときに見られるトージョンモードが低温で新たに発生することが見出された。これらの格子変形は、ヤンテラーひずみ以外の格子変形が金属と絶縁体間の相転移に深く関与していることを示す重要な結果である。 2,V酸化物やTi酸化物などにおいて、電荷及び軌道のゆらぎの時間スケールをESRにより研究した。V酸化物NaV2O5においては電荷のゆらぎの時間スケールがテラヘルツ領域にあることを明瞭に観測した。またTi酸化物においては、軌道のゆらぎにより異常にはやい緩和が引き起こされることを明らかにした。 3,Vスピネルなどに関してフラストレーションによりもたらされる特異な基底状態の研究を行うとともに、スピネルと同様の格子構造をもつパイロクロアではじめて超伝導を示すCd2Re207の磁束状態の研究を行い、準粒子励起の構造から等方的S波超伝導であることを明らかにした。
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