幾何学的にフラストレートした遷移金属酸化物に見られる特異な磁気的性質および比熱の異常を本年度は研究した。まず、ZnV_2O_4などのスピネル酸化物反強磁性体の基底状態を調べるために、パイロクロア格子上のハイゼンベルク模型を理論的に調べた。その結果、スピン液体基底状態においてスピンカイラリティーの励起が重要な役割を果たしており、3波数のスピン2量体構造の長距離秩序がカイラリティーの揺らぎによって安定化されることを発見した。さらに、1つの副格子は2量体構造の相転移点でも乱れたままであり、ずっと低温になって初めて長距離秩序を持つことを判った。 さらに、関連した金属LiV_2O_4において実験的に見出された重い電子的振る舞いを理解するために、縮退したt_<2g>軌道が磁気的性質にどのような役割を果たすかを乱雑位相近似によって研究した。t_<2g>軌道の関与する軌道帯磁率およびスピン帯磁率を計算した。その結果、複雑なバンド構造に由来して、帯磁率の波数依存性が非常に小さく局所的なスピン揺らぎが大きいことを発見した。
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