層状ペロブスカイト遷移金属酸化物の圧力による軌道の自由度の制御

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12046215
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 上床 美也 東京大学, 物性研究所, 助教授 (40213524)
• 研究分担者: 白川 直樹 産業技術総合研究所, 主任研究官 ; 池田 伸一 産業技術総合研究所, 研究員 ; 小坂 昌史 埼玉大学, 理学部, 助手 (20302507) ; 森 多美子 東京大学, 物性研究所, 助手 (70174373) ; 東堂 栄 東京大学, 物性研究所, 助手 (10114571)
• キーワード: Ru酸化物 / 圧力誘起強磁性 / 浮遊帯域法単結晶 / 一軸圧力 / 靜水圧力 / Sr_3Ru_2O_7 / 磁化測定 / Sr_2RuO_4

研究概要

層状ルテニウム酸化物Sr_3Ru_2O_7の圧力誘起常磁性・強磁性転移の機構解明を目指し、(1)MPMS-SQUID用の静水圧力下(<2GPa)磁化測定装置の開発、(2)同一軸圧力下(<0.5GPa)磁化測定装置の開発、(3)上記圧力誘起常磁性・強磁性転移は一軸圧力によるものか明らかにすること、(4)Sr_3Ru_2O_7の良質単結晶育成が本研究の当初の目的であった。平成12年度には(1),(2),(3)の目標は達成された。即ち、1.8GPa下の静水圧、0.5GPaの一軸圧下で磁化測定が行える圧力容器を開発し、静水圧ではなく、無機固体にとっては非常に小さな一軸圧力(~0.1GPa)でSr_3Ru_2O_7の圧力誘起常磁性・強磁性転移が引き起こされていることを明らかにした。(4)についてもほぼ目標を達成したのであるが、恒常的に良質の単結晶を得ることが極めて困難であることがわかり、鋭意結晶育成の努力を続けている。
平成13年度は、上記一軸圧力誘起常磁性・強磁性転移の起源が結晶構造歪の変化によると考え、一軸圧力下の電気抵抗測定、中性子構造解析の準備を進めてきた。電気抵抗については、圧力容器の製作も終わり、現在測定を進めている。中性子回折については、日本原子力研究所で三軸分光器を用いた一軸圧力下中性子回折実験を試みたが、加圧時の単結晶試料の脆性、圧力セルを用いることによる制限等により、結果を得ることができなかった。新しく4軸分光器用の一軸圧力セルの設計、試作を進めており、平成14年度中には、結晶構造の一軸圧力依存性を得る予定である。

研究成果

• [文献書誌] S.I.Ikeda, N.Shixrakawa, S.Koiwai, A.Uchida M.Kosaka, Y.Uwatoko: "The pressure dependence of magnetization of layered perovskite oxides with 4d-electron metal"Physica C. 364-365. 376-378 (2001)
• [文献書誌] S.I.Ikeda, U.Azuma N.Shirakawa., Y.Nishihara, Y.Maeno: "Bulk single-crystal growth of strontium ruthenates by a floating-zone method"Journal of Crystal Growth. (To appear). (2002)
• [文献書誌] S.A.Grigera, R.S.Perry, A.J.Schofield, M.Chiao, S.R.Julian, G.G.Lonzarich, S.I.Ikeda, Y.Maeno, A.J.Millis, A.P.Mackenzie: "Magnetic Field-Tuned Quantum Criticality in the Metallic Ruthenate Sr_3Ru_2O_7"Science. 294. 329-332 (2001)
• [文献書誌] R.S.Perry, L.M.Galvin, S.A.Grigera, L.Capogna, A.J.Schofield, A.P.Mackenzie, M.Chiao, S.R.Julian, S.I.Ikeda, S.Nakatsuji, Y.Maeno, C.Pfleideuer: "Metamagnetism and Critical Fluctuations in High Quality Single Crystals of the Bilayer Ruthenate Sr_3Ru_2O_7"Physical Review Letters. 86. 2661-2664 (2001)