極限環境下における遷移金属酸化物の量子相転移と磁気励起の研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12046219
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 瀧川 仁 東京大学, 物性研究所, 教授 (10179575)
• 研究分担者: 樹神 克明 東京大学, 物性研究所, 助手 (10313115) ; 藤原 直樹 東京大学, 物性研究所, 助手 (60272530) ; 上床 美也 東京大学, 物性研究所, 助教授 (40213524) ; 毛利 信男 埼玉大学, 理学部, 教授 (40000848)
• キーワード: 極限環境 / 量子相転移 / 磁気励起 / 高圧 / 強磁場 / 核磁気共鳴

研究概要

1.マグネタイト(Fe304)のFe2価、3価の電荷秩序に関連したフェルベー転移について、酸素濃度の異なる2種類の単結晶について高圧効果を調べた。いずれも6〜8GPaの圧力下で絶縁体-金属転移を示すことを見い出した。
2.非磁性材料(NiCrAL合金)を用いたNMRの低温・超高圧発生装置を開発し、ラダー系Sr-Ca-Cu-0高圧誘起超伝導状態におけるNMRルの観測に成功した。
3.約1Kに超伝導転移を示すパイロクロア型酸化物Cd_2Re_2O_7についてRe原子核の核四重極共鳴をゼロ磁場で行い、核磁気緩和率に顕著なコヒーレンス・ピークを見出し、S波の弱結合BCS超伝導体であることを検証した。
4.同じくCd_2Re_2O_7の単結晶試料について、磁場方位を精密に制御しながらCd原子核の核磁気共鳴スペクトルを測定することにより、200K付近で起こる構造相転移に伴い、Cdサイトの微視的な電子状態がどのように変化するかを明らかにした。
5.スピン・ギャップを持ち、高磁場で量子化された磁化プラトーを示すことから注目されているSrCu_2(BO_3)_2について、フランス・グルノーブルの強磁場実験施設との共同研究により、1/8の磁化プラトーに対応する26テスラ以上の高磁場中でCuおよびB原子核の核磁気共鳴の測定を行った。この結果、26テスラ付近で1次転移により長周期磁気構造をもった秩序相に転移することが見出され、この相でのスピン構造が決定された。

研究成果

• [文献書誌] S.Todo, N.Takeshita, T.Kanehara, T.Mori, N.Mori: "Metallization of magnetite (Fe3O4) under high pressure"J. Appi. Phys.. 89. 7347-7349 (2001)
• [文献書誌] T.Nakanishi, N.Motoyama, H.Mitamura, N.Takeshita, H.Tkahashi, H.Eisaki, S.Uchida, T.Goto, H.Ishimoto, N.Mori: "Anisotropy of the Upper critical field of the spin-ladder Sr_<14> ^xCa_xCu_<24>O_<11>"J. Magn. Magn. Materials.. 226-230. 449-451 (2001)
• [文献書誌] K.Kobayashi, N.Takeshita, N.Mori, H.Takahashi, T.Kamimura: "Pressure-induced semiconductor-metal-semiconductor transitions in FeS"Phys. Rev B. 63. 115203-1-115203-6 (2001)
• [文献書誌] O.M.Vyaselev, K.Kobayashi, K.Arai, J.Yamazaki, K.Kodama, M.Takigawa, M.Hanawa, Z.Hiroi: "Cd and Re NMR/NQR in Pyrochlore Compound Cd_2Re_2O_7"J. Phys. Chem. Solids. (発表予定).
• [文献書誌] Z.Hiroi, M.Hanawa, N.Kobayashi, M.Nohara, H.Takagi, Y.Kato, M.Takigawa: "Spin-1/2 Kagoine-Like Lattice in Voborthite Cu_3V_2O_7(OH)_2 2H_2O"J. Phys. Soc. Japan. 70. 3377-3384 (2001)