研究概要 |
本研究の当初の目的は,高温超伝導体で可能性が示唆されているストライプ構造(特に電荷秩序)の存在を,その擬一次元的な性質が電気伝導に及ぼす効果をマイクロ波領域で利用することによって,直接的に検証することであった。然るに,研究遂行途上において,スピン梯子系での集団モードについて,興味深い知見が得られたため,その問題を重点的に研究した。(1)スピン梯子系Sr_<14-x>CaxCu_<24>O_<41>系で,xを代えて,梯子方向およびそれに垂直方向の伝導度を測定した結果,ホール濃度が少ない組成でのみ,ラダー方向にのみ運動できる集団モードをマイクロ波領域に発見した。このモードはキャリヤのドープとともに,たちまち減衰してゆくことが分かった。(2)直流の非線形伝導度をパルス測定などを併用して求めた。集団モードが示すと思われる非線形伝導が観測され,さらに,集団モードがこわれたと思われる組成や,梯子に垂直方向では,定性的に異なる非線形伝導が観測され,一粒子の電場による非局在が原因であると考えられた。(3)この他に,銅酸化物超伝導体の超伝導状態のc軸方向の応答について,以下のような成果が得られた。すなわち,Bi_2Sr_2CaCu_2O_yの超伝導状態の低温極限の伝導度はキャリヤ数に極めて敏感であり,キャリヤ数が多いときは,温度の現象と共に増加するが,これは,ジョセフソン結合のいわゆるcos項によるものであり,c軸方向の準粒子の寄与を正確には反映しないことが分かった。逆に,c軸方向の準粒子の振る舞いは,温度と共に,単調に現象することがわかり,このことは,ナイーブには,フェルミ流体論を支持することが分かった。
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