研究概要 |
低次元量子スピン系である、スピン・パイエルス物質Cu_<1-x>Mg_xGeO_3の圧力効果の研究を行った。この物質の興味深い点は、スピン・パイエルス系であると同時に、(1)鎖間相互作用が大きい(J′=J_<inter>/J_<intra>〜0.1)、(2)鎖内において最近接相互作用(J_<NN>)と次近接相互作用(J_<NNN>)の間でフラストレーションが生じている(α=J_<NNN>/J_<NN>)、ということにある。本研究ではJ′,αをパラメータとした場合、スピン1/2の一次元反強磁性体の基底状態がどのように変化するかを実験的に調べることを目的としている。不純物を置換することにより実効的に鎖間相互作用を大きくすることができる。鎖間相互作用が小さい場合、スピン・パイエルス相が出現し、大きい場合には反強磁性相が出現することが理論的に示唆されているが、実験的には不純物を誘起することにより反強磁性相を誘起させることができる。また圧力を印加することによりαは増大することが報告されており、CuGeO_3の純粋試料においてスピン・パイエルス状態がより安定となることが報告されている。従って、不純物を多く置換して、基底状態が反強磁性状態となっている場合に、圧力を印加し、αを増大させると、基底状態はスピン・パイエルス状態になることが期待できる。本研究で高濃度のMgを置換したCu_<1-x>Mg_XGeO_3の圧力下磁化率測定、X線回折を行った結果、予想通りスピン・パイエルス相が出現することが明らかとなった。温度(T)-不純物濃度(x)・圧力(P)の詳細な三次元相図を作成し反強磁性相、スピン・パイエルス相の相境界の次数についても考察を行った。
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