研究課題/領域番号 |
12046224
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田口 康二郎 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (70301132)
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研究分担者 |
十倉 好紀 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (30143382)
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キーワード | フラストレーション / パイロクロア型モリブデン酸化物 / モット転移 / 異常ホール効果 / スピンカイラリティー / バンドフィリング |
研究概要 |
今年度は、強磁性金属とスピングラス絶縁体のそれぞれについて光反射率の温度変化を測定し、電子構造変化を明らかにした。強磁性金属のSm_2Mo_2O_7は、基底状態においても非常にわずかなドゥルーデウェイトしか示さず、中赤外領域に強い吸収を示す。また、温度上昇とともにそのわずかなコヒーレンスは消失してしまうことが明らかになった。このことは、4d電子系である本系においても電子相関効果が重要であることを示しており、この系の金属絶縁体転移がモット転移であることが明らかになった。また、強磁性金属で特異な異常ホール効果を示すNd_2Mo_2O_7に対し、2Kで、磁場15Tまでのホール効果を測定した。磁場を(100)方向および(110)方向にかけたときは、ホール抵抗率は強磁場側でゼロに近づき、磁場を(111)方向に印加したときのみ、7T付近で符号が反転することを見出した。この結果はスピンカイラリティーに基づくベリー位相理論の予言と一致するものである。さらに、ホール伝導度のフィリング依存性を詳細に調べた。この結果、ホール伝導度は通常の認識とは異なり、磁化に比例せず、むしろバンドフィリングによって激しく変化することが明らかになった。ベリー位相理論では、ホール伝導度はフェルミ面がバンド交差点をよぎるときに激しく変化することが予想されており、この実験結果は理論の予言に合致するものである。これらの結果より、この系での異常ホール効果がベリー位相機構によるものである可能性が高いことを明らかにした。
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