研究概要 |
主な研究成果は以下のとおりである. 1.様々な複分解反応を用いてPdCoO_2単結晶の育成を試みた.その結果,最も単純なPdCl_2とCoOの反応を用いた場合が最も大きな単結晶が得られることを明らかにした. 2.Pd(Co,Mg)O_2単結晶の育成に成功した.磁化率の温度依存性がキュリー・ワイス的な温度依存性であることを明らかにした. 3.PdCoO_2の結晶構造の詳細を単結晶4軸X線回折測定とマキシマム・エントロピー解析法で調べ,PdとO間の強力な結合状態が明らかとなった.この結果より,PdCoO_2の金属電気伝導性はPdとOの混成軌道と密接に関係していることが分かった.さらに,CoO_6八面体がc軸方向に非常に縮んでいることが明らかとなった.これは上記のPdとO間の強力な結合状態に関係している.また,高圧下での格子定数比c/aの変化ともコンシステントである. 4.PdCoO_2の電子構造を光電子分光と逆光電子分光によって調べた.その結果,Pd4dのイオン化クロスセクションが増大する低フォトンエネルギー領域では,フェルミレベルでの状態密度が存在することを明らかにした.また,共鳴スペクトルの結果から,Co3dのフェルミレベルでの部分状態密度は存在せず,Pd4dのフェルミレベルでの部分状態密度は存在することを明らかにした.従って,PdCoO_2のフェルミレベルでの状態密度への主たる寄与はPd4d電子によってなされており,PdCoO_2の金属電気伝導性はPd電子の遍歴性に依っていることが明らかとなった.この結果は上記の3の結果ともコンシステントである. 5.CuFeO_<2+δ>(δ=-0.026,-0.061,0.014,0.085)単結晶を用いて反強磁性状態に及ぼす酸素不定比性の効果を調べた.その結果,新たなメタ磁性転移が現れることと高磁場での各磁性状態が安定化されることが明らかとなった.
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