研究課題/領域番号 |
12046231
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
榎 敏明 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (10113424)
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研究分担者 |
宮崎 章 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (40251607)
高井 和之 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (80334514)
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キーワード | 有機磁性伝導体 / π-d相互作用 / 分子磁性体 / 反強磁性 / 電荷移動錯体 / 金属製有機物 / TTF系錯体 / 低次元電子系 |
研究概要 |
本年度は以下のπ-d相互作用に基づく有機磁性伝導体の構造および物性について研究を行った。 1.分子性反強磁性体(EDTDM)_2FeBr_4のESR測定および高圧下電気伝導度の測定を行った。同系物質である非磁性GaBr_4塩中に磁性イオンFeBr_4を1%混入した系ではπ電子系のESRシグナルのg値は著しい温度変化をもち、π-d相互作用を介したボトルネック効果を示している。一方FeBr_4塩の高圧伝導度には、基底状態がSDW相から金属相へと変化する圧力付近においT_N=3.0K付近で活性化エネルギーに異常が見出され、磁性d電子の挙動が伝導π電子に強く影響を与えていることが示唆される。 2.既に見出されているπ-d相互作用系(DMET)_2FeBr_4のハロゲン・カルコゲン置換体である(DMET)_2FeCl_4および(EDS-TTF)_2FeBr_4の構造・物性を検討した。(DMET)_2FeCl_4の伝導度の活性化エネルギーには、反強磁性転移点(T_N=2.8K)付近で異常が見出され、π電子系・d電子系間の相関が明らかになった。一方(EDS-TTF)_2FeBr_4ではドナーアニオン間の非常に近いSe...Br分子間接触にもかかわらず、磁性イオン間にはほとんど相互作用が見られない。これはドナーのSe置換により、π電子系とd電子系との重なりが減少したためと解釈できる。 3.ハロゲン置換基を持つドナーを用いた新規π-d相互作用系(EDO-TTFBr_2)_2FeBr_4を開発した。この塩の磁性率のWeiss温度(Θ=-20〜-30K)、反強磁性転移点(T_N=13.5K)から強いπ-d相互作用の存在が示唆される。反強磁性的相互作用発現の機構として、結晶中でのドナーとアニオンのBr原子間の非常に近い分子間接触を介した、磁性d電子によるドナーのπ電子系に引き起こすスピン分極が働いていると考えられる。
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