研究概要 |
従来からLa_<2-x>Sr_xNiO_4には多数の研究があるが、単結晶育成はx<0.6でしか報告されていない。これに対し、我々はREサイトを置換したRESrNiO_4(RE=Pr,Nd,Sm,Eu)単結晶の作製に成功した。さらに、NdSrNiO_4では2K,9Tで約85%もの負の磁気抵抗効果を観測したのに対し、RE=Nd以外の磁気抵抗効果は同じ条件で1%程度しかない。そこで、本年度はキャリア量を変化させて物性の全体像を把握することと、Nd系で観測された大きな負の磁気抵抗効果の発現機構を探るためにRE_<2-x>Sr_xNiO_4(RE=Pr,Nd,Sm)単結晶を作製し、輸送現象、磁性、結晶構造、電子構造などを調べた。 Nd_<2-x>Sr_xNiO_4の抵抗率は、x=0.5を境に高ドープ領域では面内、c軸方向共に急激に小さくなった。また、0<0.5では抵抗率の異方性が小さいが、これはLa系に比べて面内抵抗が大きいためである。さらに、x=0.33の抵抗率の温度依存性はRE=Pr, Ndは電荷整列相の存在を示唆しているが、Sm系ではそのような振る舞いは観測されなかった。これはキャリアの動き易さを反映していると考えられる。一方、RE=Ndの磁化率は低温でピークを持ち、この温度以下で抵抗率が特に急激に増大したが、他のRE元素の系ではこのような振る舞いはみられなかった。Nd系ではSrの広い範囲で大きな磁気抵抗効果を観測した。さらに、Nd系の分光測定の結果からNd, Ni, Oが混成軌道を形成していることが示唆された。 これらの実験結果から、Nd4f電子と伝導電子の間のcf相互作用が、RE=Ndに特有な急激な抵抗率の上昇や磁気抵抗効果、磁化率の振る舞いに関わっていると考えられる。また、Pr系ではむしろ近藤効果と競合するRKKY相互作用が働いていることが考えられる。
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